商標の機能
よく商品やサービスを取り扱うときに、商標登録という言葉を聞いたことがある人も多いかと思われます。ところで、この商標とはどのようなものを指すのでしょうか?商標というのは、自分たちの会社などで取り扱っている商品もしくはサービスについて、他人もしくは他社が製造をして商品やサービスと識別するために行う標識のようなものと理解してもらうといいでしょう。よく商品などを紹介するときに「ブランド」などと呼ばれることがあるかと思われます。このブランドのことを一般的に商標ということになります。
この商標についてですが、ほかの商品やサービスと差別化するための機能というものをもっています。しかし、そのほかにもいろいろな機能を有しているとされています。まずは、出所表示機能というものです。つまり、全く同じ商標がついているサービスもしくは商品であれば、それは同じメーカー、販売業者、もしくはサービス提供者から提供されているものでないといけないということです。
また、品質等保証機能というものもあります。全く同じ商品もしくはサービスであれば、常に全く同じ品質をもっているということを意味しています。こちらについても、商標によって保障されるということになるわけです。
そしてもう一つ、広告機能というものがあります。商品やサービスに商標がついたとします。すると、この商標をメーカーが提供をする、そして、消費者は商標についての情報を受け取ることができるようになります。つまり、商標をやり取りをすることでメーカーの提供しようとしている商品についての宣伝効果を消費者・需要者は期待することができるようになります。
商標の機能とは、商品やサービスについてより良い印象を消費者の人々に植え付けることです。こうして、自社の提供しているサービスや商品をより多くの消費者に購入してもらおうという刺激をもたらせます。新しく、メーカーが商品を開発した場合に商標登録の手続きをとろうとするのは、このような機能を有していることが関係しているわけです。
登録の重要性
もし自社でオリジナルの商品やサービスを開発した場合には、商標登録をしておく必要があると思ったほうがいいでしょう。それは、商標登録をすることで自社の製品やサービスを保護することができるという効果があるからです。
商標登録をされた商品もしくはサービスを、ほかの誰かが勝手に使用をする場合には、ただ乗りによる利益を他人が持って行くことになってしまいます。このことは、不正競争行為もしくは侵害行為に抵触をする恐れがあります。さらに、もし商標登録をしていない人が出した商品もしくはサービスを消費者が購入をしてしまった場合には偽物商品を購入したことになってしまい、消費者は一種の被害をこうむることになってしまいかねません。
また、ほかのところでも同じ商品を販売するということは、市場に出回る商品も大量になります。ということは、商品価値のダイリューションとも言いますが、商品やサービスの希釈化が起こってしまう可能性もあります。すると、自社の商品やサービスについてブランドイメージが低下をするという二次被害がもたらされてしまう可能性も出てきます。
そこで、商標登録をしておく必要があるのです。もし、商標登録している商品に似た商品やサービスを販売しようとしても、不正競争行為もしくは侵害行為により他者のただ乗りを防ぐことができます。
不正競争防止法では、商標登録された商品はすべてその保護の対象になります。しかし、この法律では商標登録を行っていなかったとしても、保護の対象になる商品はあることはあり得ます。ただし、その条件はだれもが知っている著名なもの、もしくは周知の事実になっているものが対象になります。逆にいえば、大して著名なものでなければ、商標登録をしていない限り保護の対象にはならないということを意味しているわけです。
新商品や新しいサービスの場合には、まだ周知徹底されていない可能性が高いでしょう。ですから、もし新商品や新しいサービスを提供することになった場合には、商標登録をして他人にただ乗りされるようなことのないようにきちんと対策を講じておく必要があるわけです。また、著名や周知されているというのは客観的に判断されます。ですから、保護を求める場合にその証明は非常に困難な側面があることを理解をしておくべきといえます。
識別力に関して
商品を作った、もしくはサービスの開発したということになって商標登録の申請をしたとします。しかし、商標の申請手続きを行っていれば、何でもかんでも認められるかというとそうではありません。商標登録を受けることができるためには、登録要件といわれていますが一定の基準を満たすものでないとなりません。
登録を満たすための要件として、識別力というものが挙げられます。そもそも商標というのは、ほかの商品と識別するための標識という役割があります。ですから、ほかのところとははっきりと違うということを証明できるような識別力がどうしても必要になってくるわけです。ちなみに、この「識別力」ですがいくつかの条件が該当します。
まずは、「普通名称」が使われているかどうかについてです。例えば、机の商品に商標の登録申請をしたとします。その場合、「机」とか「デスク」といった商品そのものを示す商標になっているかどうかが確認されます。「慣用商標」かどうかということも考慮されます。通常この商品であれば、使われることが多いであろう名称かどうかということについてです。例えば、お酒であれば「正宗」といった言葉が比較的なじみやすい慣用商標でしょう。
また、産地や販売地、原材料、効能、形状、価格、生産方法といったことについて書かれた商標も識別力を欠きます。さらに、けっこう知名度のある名称もしくは個人の名前がついた商品というのも登録要件を欠く商標と言えるでしょう。また、名前などではないとしても、ものすごくシンプルでありふれたものも識別力を欠く商標の可能性があります。上で紹介をした項目に引っかかってくる場合には、商標登録が認められない可能性があります注意しましょう。
なお、商標は商品やサービスのジャンルなどによって、ライン上の微妙なものもがたくさんあります。ですから、これから登録申請をしようとしている商標がセーフかアウトかについては、素人判断せず専門家の人にあらかじめ相談をしておくことをお勧めします。相談に当たっては、商標に詳しい弁理士・弁護士などが多数いますので事前に相談されることをお勧めします。
類似の可能性
新商品を作って、「この名前でいこう」と思ったとします。その名前で商標申請を行ったところ、実はすでにその名前で商標登録が行われていたというケースももしかしたらあるかもしれません。また、少し違っているけれども、大枠としては似たような名前という類似の名称についても、申請手続きを行ったとしても登録が却下されてしまう可能性があります。
例えば、もし商標登録がほかの人がすでに行っていて、登録が済んでしまっている商標と全く同じもいけませんが、類似した言葉である商品名についても、商標の登録が認められない可能性があります。ちなみに、登録の申請を行ってから実際に登録が認められるまでには、時間がかかるのが一般的です。例えば、あなたがこれから申請しようとしている名称を、ほかの誰かがすでに出願をしていたとします。しかしまだ正式に商標登録が認められていないという場合には、全く同じもしくは類似の名称であったとしても、商標登録を先に出願をしている人が受けていない限りであれば、あなたの登録が認められる可能性は残されています。
逆に登録手続きを行っていない名称がネックになって、あなたの登録申請が却下される可能性もあります。これは、周知もしくは著名商標といわれていますが、たとえ商標登録をしていなくても、すでにかなり世間一般的に知られているような商標の場合、似たような名称もしくは同一の名称で申請をしても却下されてしまう可能性があります。
また、もしすでに全く同じ名称もしくは類似した名称で登録が認可されているものがあったとしても、前に申請をしたものとあなたが申請しようとしている商品もしくはサービスのジャンルが異なるという場合には、商標登録が認められる可能性が出てきます。
自分のイメージしている名称で、商標の登録が行われているかどうかについてですが、自分で調べようと思えば調べることはできます。もしくは、専門の弁理士・弁護士の人に相談をした際に、先客がいるかどうかの確認をすることができます。特許庁で却下をされれば、また名称を考え直して手続きを一からやり直さないといけなくなってしまいます。ですから、事前にきちんと確認をしておくことをお勧めします。
登録不可の事例
商標登録をするためには、いろいろな条件をクリアしていないといけません。しかし、たとえ商標登録をするための条件をクリアしていたとしても、登録を認められない事例もありますので注意しましょう。それには、いくつか項目がありますがその項目についてここでいくつか紹介しておきます。
まずは、国関係のものは商標登録することはできません。例えば、日の丸や菊花紋章、勲章、褒章で使われているマークについて商標化することはできません。また、外国についても同様で国旗や紋章、記章についても拒絶理由の対象になります。赤十字のマークのように、世界一般で広く認知されている国際機関のマークなどについても商標登録は認められません。地方公共団体がつかっているようなマークについても却下されるのが一般的です。
さらに、商標に掲載する人物の承諾なしで肖像もしくは名称、芸名、雅名、著名といったものを掲載することはできません。ちなみに、もし対象の人物の了解を得ている場合には商標登録が認められる可能性はあります。また当然のことだと思われる方がほとんどでしょうが、公序・良俗に反するような恐れのある商標についても、却下される可能性が極めて高いと思ったほうがいいでしょう。
日本国内や世界中で、よく知られているブランドというものがあります。このようなブランドと全く同じもしくは類似した商標を使うことは原則として認められません。しかし、この場合に対象のブランドの商品やサービスとのジャンルが全く違う場合には、商標登録が認められる可能性はあります。ただし、もし世界的に有名なブランドだからということで不正使用を目的として商標登録をしようとしている場合であれば、もちろん申請は却下されてしまいます。
このほかにも、商標登録をすることができないケースについてはいろいろなものがあります。商標登録のルールについては、商標法という法律の中できちんと規定をされています。商標登録することができない商標については商標法の第三条・第四条のところに記載されています。こちらをチェックするといいでしょう。また、自分でチェックするのはどうも不安という場合には、商標を専門的に取り扱っている弁理士・弁護士に事前に相談して見ることをお勧めします。
複数登録について
新しい商品を開発して、この商品を大事にして自分の会社の主力商品にしていきたいと思う人もいるかもしれません。その場合には、もちろん対象の商品の商標登録をしておくことは重要なことです。しかしそれだけでなく、自分の商標と類似になりそうな商標についても、きちんと押さえておくことをお勧めします。
基本的に、あなたが商標登録をしてしまえばそれと同一はもちろんのことその類似の商標についても登録することができなくなります。しかし、「類似」というのはどこまでがOKでどこからセーフなのかというのは線引きが非常に難しいところがあります。一文字ぐらいしか違わないという場合でもNGになるかもしれません。しかし、文字はかなり違っていても言葉の響きがどうも似ているという場合には、もしかするとその商標がNGになってしまう可能性もあります。そうなると、あなたの商品とその類似商品とが抵触しあう形になってしまって、結局のところ両方ともNGになってしまうことになります。ですから、類似で登録されそうな商標についても押さえておけば、他人があなたの利益の侵害をする可能性を極力排除することができるようになります。
また、ここでぬかりのないようにしたいことがあります。商標というのは期限がついているということです。商標は期限が来ても更新をすれば引き続き商標登録をすることは可能です。しかし、中には普段の業務の忙しさに目が行ってしまって、ついつい商標の更新手続きを忘れてしまうということもあります。
しかし、もし上のように更新の商標登録をしておけばこの商標登録によって他人が似たような商品を販売してしまう可能性を極力排除することができるようになります。
ただし、上のケースの場合きっちり更新の手続きをとらないといけなくなってしまいます。自分の商品を末永く独占的に販売をしたいというのであれば、商標の権利の消滅時期についてはきちんと事前に確認をしておくことが重要です。もし消滅を知ったらその期間にもよりますが速やかに更新の手続きをすることをお勧めします。せっかくの商標権を失わないようにしましょう。
不使用取り消しについて
もし商標登録の手続きをして、あなたの申請が認められたとします。そこで安心をしてしまうのは少し早いかもしれません。中には、いずれ商品化するもしくはサービスを提供することになるからということで、早めに商標登録をする人もいるかもしれません。確かに、早めに申請をしておけば他者に先に申請をされるということを防ぐことができます。
しかし、商標登録をしたはいいけれどその後一切その商標を使って商品の販売やサービスの提供を行っていないと、取り消しの対象になってしまう可能性もありますので注意しましょう。もし商標登録をして3年以上、登録をした商標を使っていない場合には不使用取消審判というものを請求される可能性があります。そして、取り消し事由に相当すると判断されてしまった場合には、せっかく取得した商標権が取り消されてしまう事態が起こり得ます。
もちろん、取り消し後あなたがその商標を使って商品やサービスを販売したいといっても使用することができないのは当然です。また再度商標登録の申請を行っても、もし他者が登録をしてしまえばあなたの申請は却下されます。では、今後の時のために早めに更新登録をするには、どうすればいいのでしょうか?
商標登録をしたけれども、しばらくの間は使わないという場合には、指定商品または役務に一部変更がある場合に限り、その商標を再度商標出願をするという方法が挙げられます。そうすれば、不使用の取り消し請求で失効をしてしまったとしても、他人があなたの登録していた商標を使うことが難しくなります。このように、いろいろな対策法はありますので商標に詳しい弁理士・弁護士に相談をしてみて、あなたに最も合った方法で問題を解決するように心がけるといいでしょう。
名前のポイント
ビジネスをしていく上で、商標というのは非常に重要になってきます。商標の良しあしによってその商品の売り上げが大きく影響を受ける可能性もあります。もし名称をつける場合には以下のポイントについて注意をしましょう。
まずは、独自性のある商標を使うことをお勧めします。商標というのは、そもそもは識別するために使われている標識のようなものです。ということは、オリジナリティーのある商標というのは、識別力が強くより多くの人にあなたの商品を認識してもらえる機会を与えることになります。例えば、ありふれた名前の場合には確かに消費者になじみがある分、早めに覚えられる可能性があります。一方で、あまり意味のない造語というのは、なかなか消費者に受け入れられないところがあるかもしれません。しかし、後者の場合いったん覚えてもらえたら「これはあの商品」と消費者・需要者に認識される可能性があります。ですから、より購入してもらえるという効果を期待することができるわけです。
また、消費者のどこにターゲットをおくのかということについても、きちんとリサーチをしておくことをお勧めします。そして、そのターゲットになる人たちの耳にダイレクトに伝わってくるような名前ほうが、より多くの人に関心を持ってもらえるという効果をもたらしてくれます。そのためには、シンプルな名前にするもしくは逆にキャッチフレーズを付加する商標にするという方法もあります。
さらに、商標登録をするときに注意したいこととして、ただ字面を見るだけでは不十分ということです。たいてい、商品名を紹介する場合にはテレビコマーシャルが代表的ですが言葉で伝えることが多いようです。ということは、音の響きというのもその商品を購入するかどうかについて、多大な影響をもたらす可能性が高いのです。商標登録をする場合には、聞いた印象でインパクトのあるものかどうか、自然と耳に入ってくるような発音になっているかどうかということについてもきちんと確認をしてから出願することをお勧めします。
最近では、グローバル社会ということがしきりといわれているかと思われます。ですから、もしかすると外国であなたの作った商品が販売される可能性もあります。ということは、外国人が購入することを前提にして商品を作る必要もあるということを理解しないといけません。日本人が何気なく使っている言葉の中には、外国語にするとものすごく卑猥だったり暴力的な言葉になってしまったりするケースもあります。外国人が購入しても差し支えのない商品かどうか確認をすることも怠らないようにしましょう。
普通名称化とは
商標登録をしたときには、比較的オリジナリティのある商品名にしたつもりだったとします。ところが、その商標があまりにオリジナリティーがありすぎて「○○といえば○○」というように、あなたのつけた商品名がその商品の属しているジャンルの総称とイコールになってしまう可能性もあります。このような状況に陥ってしまうことを普通名称化と呼びます。
もし普通名称化になってしまうと、たとえあなたが商標登録をしていたとしても、他者がその名前を使ったとしても、そのことを阻止することができなくなってしまう可能性があります。このことを「商標権の空権化」と呼ばれることがあります。例えば、今では「エスカレータ」などは、すでにどこでも使われている言葉になっています。もしくは、和菓子の中に「月餅」や「わらびだんご」という商品があります。繊維の素材で「ナイロン」という素材があるのも広く認知されているでしょう。さらに薬品の中に「アスピリン」や「赤チン」という商品があることも知っている人がほとんどかと思われます。
いま上で、いくつかの商品を紹介しましたが、いずれも共通しているのは元は商標登録をされた名前という点です。通常なら登録をしているところしか、この商品名を使うことができないはずなのですが、あまりに当たり前に使われるようになってしまって、商標の空権化が起きてしまっているのです。
もし、商標の空権化を起こしたくないというのであれば、こまめに商標登録をされているということのアピールをしておくことが重要です。特に、普通名称という形でやりとりされている場合にはそのやり取りをしている当事者に対して、きちんと警告をしておくことが重要になります。もしくは、商標として使用をすることを認めたとしても、相手に対して商標登録されている商品であるということを、きちんとラベルなり何なりに記載をすることを求めるようにしましょう。
最近では、世界中で商品が流通しているのが当たり前になってきています。ですから、自分の知らない世界のどこかで商標登録をしているはずの商品名が普通名称化されてしまうという可能性も出てきているのです。自分の商標を守るということが、最近ではとみに難しくなっていると言えるでしょう。
商標の種類
ほかの商品との差別化を図るための標識として商標はあります。ところで、この商標ですが具体的にはどのようなものが認められるでしょうか?商標の種類ですが、大きく分けて6つのタイプに分類することができます。
まずは、「文字商標」と呼ばれるものです。商品やサービスの名前について記載をされているものが対象になります。また、「図形商標」というものもあります。商品を販売するときに、そのラベルのところに対象の商品を代表するようなシンボルマークを付けることもあろうかと思われます。このマークについても、商標登録の対象にすることができます。また、商品名のところになにがしの記号がくっつくこともあるかもしれません。この記号についても、「記号商標」といって登録出願の対象になります。
また、商標の中には「立体商標」といって、3次元の商品や形状をしたものも対象にすることができます。さらに上で紹介をしたものを、単独で商標登録の出願をすることは、あまりないかと思われます。そこで「結合商標」といいますが、文字や図形、記号、立体的形状を結合させたトータルとしての商標登録を行うこともできるようになっています。また、上に紹介をした結合商標に、さらに色をつけたものを商標登録することもできます。このような種類のことを、「色彩商標」という風に呼んでいます。
このほかについてですが、例えば、香りとか、音についての商標登録を行いたいというケースもあるかもしれません。しかし、現在のところ、香りと音については日本国内では商標登録の対象外という位置づけになっていますので注意しましょう。
ただし、香りや音については海外を見てみると、一部の国では商標登録の対象として認めているところもあります。もし、このトレンドが世界中を取り巻くようになってくれば、日本国内でも商標登録の対象として保護すべきという議論も出てくる可能性はあるかもしれません。しかし、現時点では登録要件などで難しい問題があり、登録の対象外であるということも理解をしておくべきでしょう。申請をしても却下されます。