企業戦略と商標管理

商標は、特許権や実用新案権などの他の知的財産権と違って、10年ごとに登録を更新できます。一度登録しておけば、半永久的に権利を守ることができます。面白いのは、商標は使わなくても登録できるという点です。商標権を取るだけ取っておいて、実際に使用しなくてもそれほど問題はありません。3年以上継続して使用していない場合には不使用取消審判を請求されることがありますが、出願するときや、権利の更新をするときに、その商標を使用している必要はありません。
既に取得している商標やこれから使う予定の商標に類似している商標など、他社に使われたら困る商標もありますから、そういった商標は先に登録しておくと、自分が使っていなくても他社の使用を防止できるので安心です。また商標権は、自分にとって利益のある形で他社に利用を許可したり、譲ったりすることもできます。いわゆる知財戦略ですね。
商標はその商品やサービスの内容とその質を需要者に保証するものです。その信用や知名度に乗って、他人が利益を得る行為は、違法というだけでなく、本来の信用を損ない、権利者の利益を大きく損ねることになりかねません。信用は一度損なってしまうと、取り戻すのに大変な時間がかかります。自分の利益と信用を守るためには、自社の持つ商標を管理することはもちろんですが、登録して権利化する前にはどの分野でどんな商標が登録されているかを把握しておくことも大切です。
海外の事情や国際情勢にも注意する必要があります。一例ですが、TPP参加が決定すれば、商標権にも影響があるのではないかと言われています。今の日本の法律では、視覚で認識できないものは商標登録ができないのですが、TPP参加後には、音が商標として登録を認められるようになるかもしれないという話があります。
また、出願をする時にどの国の特許庁を選ぶかという選択もポイントになりそうです。権利付与の条件は国によって違い、大抵の国は自国にとって有利になる権利を優先的に登録する傾向があるからです。今後は自社の商標をすぐに権利化してくれるのはどこなのか見極めることが必要かもしれません。